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Blog正常咬合の概念の変化

2024/03/11 カテゴリー:NEWS | コラム/NEWS | お知らせ

正常咬合の概念の移り変わり
Angle の唱える「Normal occlusion」を解剖学的に詳細に研究した報告が、その後、数多く見られるようになった。Hellman の4つの咬合要素を基に第三大臼歯を含めた138箇所の接触点から捉えた研究は良く知られている。Hellman 以降、Friel、Wheelerらも上下の歯の接触状態から同じように Normal occlusion の概念を報告し、それらは、解剖学的、形態的なNormal occlusionの考えの基本となり、その後のNormal occlusion
の解剖学的特徴の一つとしてよく引用されるようになった。

その後、セファロ分析法、筋電図などの電子機器、などが開発、導入されるとそれまでの乾燥頭蓋の研究からより正確な頭蓋測定や生理学的な観点からの研究が行われるようになった。その結果、顎関節の咬合に果す役割が重要視され、それまでの静的な咬合から機能的咬合系を踏まえた動的な咬合論へと変わっていった。
この間、1920年代に米国のMcCollum と Stallardは、蝶番軸 (Hinge axis;ヒンジアキシス)を求め、中心位を機能的咬合位として1歯対1歯の咬合形式を機械的に咬合器上で再現し、それを口腔内に戻すとする咬合再構成法の治療理論(オーラルリハビリテイション)、すなわちナソロジー(Gnathology)を提唱した。有歯顎者の上下顎歯の咬合関係や咬合形式、咀嚼運動などの下顎運動機能、などの解明に果たす役割は大きかったと言える。ナソロジー(Gnathology)の考えが広がるにつれて、その影響は矯正治療における天然歯の機能的咬合への関心を高める結果となり、ナソロジー(Gnathology)的な咬合理論に基づいた最適咬合を矯正治療に求める傾向が20世紀後半に見られるようになった。咬合器上での咬合診断(図7:咬合器診断)、中心位を治療位とした治療、ミューチュアリプロテクティックオクルージョン、などはその顕著な例である。
しかし、蝶番軸や中心位などの存在根拠、生体と咬合器との構造上の違い、画一的で機械的な咬合理論、咬合器トランスファー時の誤差の介入、などナソロジーの理論的根拠に疑問が投げかけられるようになった。特に、下額運動に対する生理学的、生物学的な学際的研究の欠落により過度に簡素化された機械論的な咬合理念を維持することができなくなったと言える(診断編のⅥ.6つの項目の顎運動機能を参照)。


1980年代、米国では、歯列矯正によってTMD (Tempromandibular Disorder;下顎運動機能障害)を発症したとする判例を経験し、それ以来、TMD と矯正治療との因果関係について多くの研究報告がみられたが、両者の因果関係を肯定できる信憑性の高い報告は認められなかった。その結果、理論的な根拠が明確に示されない限り咬合が顎関節症の原因になるとは言えないとの考えが支持されるようになった。さらに 21世紀に入ると矯正領域のみならず、保存修復、補綴領域においても、それまでの研究、咬合治療成績から咬合異常は顎関節症の重要な発症要因ではないとの考え方が受け入れられるようになり、行き過ぎた咬合治療に警鐘が鳴らされ、上下顎歯列の咬合関係を必要以上に重要視しない傾向になってきている。 

監修日本橋人形町ジェム矯正歯科

   
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