WEB予約

ブログ

Blog矯正治療 抜歯空隙の閉鎖方法

2023/09/21 カテゴリー:NEWS | コラム/NEWS | 院長ブログ | コラム/院長

前歯部を後退させる抜歯空隙を閉鎖させる方法には

1. 顎内固定を応用する場合  スライデイングメカニクスかクロージングループのいずれかである

2. 顎間固定を応用する場合は II級あるはIII級ゴムの使用

3. 学外固定を応用する方法 J-hook応用の

4. TADを応用する場合 歯科矯正用アンカースクリュー

 

1. スタンダードエッジワイズ法にはおける抜歯空隙の閉鎖方法について スタンダードエッジワイズ法では、歯や歯列の特徴からワイヤーにファースト、セカンド、あるいはサードオーダーベンドと言われる各種ベンドを付与する必要がある。一般に抜歯症例ではレベリングの段階から犬歯の遠心移動が終了するまで、ステンレス鋼などラウンドワイヤーを用いてファースト、セカンドオーダーベンドを付与し歯の移動を行う、そして4前歯を後退させる際に初めてクロージングループをオーダーベンドに付与したレクトアンギュラーワイヤーを用いるのが通報である。 1) ベンド付与による歯の移動制限や犬歯の遠心移動による弊害 ワイヤーに沿って歯を移動させる場合は、各種ベンドが付与されていると歯の動きは制約を受ける。したがってワイヤー上を移動させる場合は、ベンドを入れないなどの工夫が必要になる。さらに、犬歯の遠心移動にはラウンドワイヤーを用いるのが一般的であるが、このラウンドワイヤーでは歯の移動に伴ってたわみ量が増し、バインデイングを惹起する恐れがある。また、遠心移動に際し捻転や犬歯間幅径の増大を起しやすいのも臨床上よく経験することである。

 

 

クロージングループから発揮される過度な矯正力

 スタンダードエッジワイズ法では。犬歯の遠心移動した後にレクトアンギュラーワイヤーにループを付与し、このループを活性化させることにより抜歯空隙を閉鎖するシステムを用いている。このシステムでは、ループの閉鎖力によって矯正力が発揮されるため摩擦抵抗がなく、歯の移動がにとって必要な矯正力を直接伝達できることができるので、合理的にように思われる。しかしながらレクトアンギュラーワイヤーに付与されたループから発揮される力は、018×025のワイヤーでは実際の移動に必要な力より約2倍にも及ぶと言われている。この強い力を回避するためにワイヤーサイズを小さくしたり、ループデザインを工夫してヘリカルあるいはダブルループを用いることで力を弱めている。また、レクトアンギュラーワイヤーをブラケットのスロット内に挿入する際にも強い力を必要とし、これらの過度な矯正力は患者の不快感を増し、時としてその矯正力をが根吸収のリスクファクターとして作用することもある。特に、022×028のスロットを用いた場合には過度の矯正力が発揮され、固定歯も含め歯列弓形態に3次元的な悪影響を及ぼす原因になることもある。

また、ループの活性化はアーチワイヤーを変形させ、歯列の連続性を損ないやすく、しかもループ付与によるワイヤースパンの増加は、トーク効果を弱めたり、前歯の舌側傾斜やデイープバイトを引き起こす原因にもなり得る。そのような場合、抜歯空隙閉鎖後、再度レベリングをする必要が生じ、結果としてアイデイアルアーチの装着が遅れたり、またトークやバイト挙上の改善に時間を費やすことにより治療の長期化につながる可能性もある。

 

 口腔内の影響は、口腔内におけるループは、口唇や歯肉に接触しやすく、潰瘍や口内炎の原因にもなりかねない。さらに、口腔清掃の障害となりやすく、口腔衛生管理への影響も決して見逃すことはできない。

 

 

 

2.スライディングメカニクスとは?

スライディングメカニクスでは、早期にレクトアンギュラーワイヤーを装着し、ワイヤーを後方へ滑らせながら6前歯を一緒に後退させることができる。一方、スタンダードエッジワイズ方ではワイヤーをスロットやチューブの中を滑らせるのではなく、クロージングループによって摩擦抵抗を受けずに抜歯空隙を閉鎖するのが特徴である。

 スライディングメカニクスでは、018 X 025スロットでも022 X 028スロットでも行うことができるが、022 X 028スロットの方がバインディングなどの弊害は少ない。

1)スライディングメカニクスとその利点

 (1)治療早期からのレクトアンギュラーワイヤーによるスライディング

  ストレートワイヤーテクニックでは、ベンドを付与する必要がないため超弾性ワイヤーを多用することができる。この超弾性ワイヤーの出現により治療の初期段階からステンレスのレクトアンギュラーワイヤーの装置を可能にし、その結果、バインディングを軽減し、3次元的な歯列形態の保持やトークコントロールを確実にすることができるようになった。

  ・バインディングの軽減とは

   矯正力を負荷して歯を動かす際、力の作用点と力の抵抗中心点を一致させることは、解剖学的に不可能である。歯根は歯槽骨内に植立し、強制力は歯冠に作用し、その際の抵抗中心点は根尖端から約三分の一付近の歯根内に存在すると考えられている。力の作用点と抵抗中心点が異なるため歯は傾斜しながら移動する。この状態で歯冠に持続的な強制力が作用されると歯は力の作用方向に過度に傾斜していく。このような傾斜することをティッピング(tipping)と言うが、実際の歯の移動では過度の傾斜を避けるためにブラケットやワイヤーなどの特性を利用して、できるだけ大きくする方法がある。しかしながら、いかなる方法を講じても強制力を受けた歯は傾斜しようとする。そして、その力はワイヤーに伝達され、ワイヤーのたわみとして現れる現象をバインディング(binding)と呼んでいる。

 このバインディングは、歯の移動を妨げる間接的な原因の一つと考えられている。このバインディングの程度は負荷される強制力と挿入されるワイヤーの太さや硬さ(剛性)によって影響を受ける。バインディングが大きいということは、それだけ強制力がワイヤーのたわみとして発現していることを意味している。

 バインディングが生じると歯の動きは一時中断する。そして、バインディングによって生じたワイヤーのたわみはワイヤーの復元力によって元の状態に戻ろうとし、その復元力が歯をアップライティング(uprighting)させ、結果として移動することになる。このように歯の移動はティッピング、バインディングそしてアップライティングの一連の流れ中で行われる。しかし、移動方向への強制力が著しく減衰すると作用点での力は弱くなり、アップライティング時に歯は元の位置に戻る動きとなって望むような歯の移動が行われない場合もある。一方、ワイヤーの復元力以上の強制力が作用されるとバインディングは一層大きくなる。つまり、バインディングを起こしやすいシステムでは、アップライティングに時間がかかり、円滑な歯の移動に支障があるなどの深い事項を惹起しやすくなる。このバインディングを軽減するにはワイヤーを熱処理して硬くする、あるいは太いワイヤーを用いるなどワイヤーの剛性(stiffness)を高くして、歯の移動時に生じるワイヤーのたわみ量を少なくする必要がある。022 X 028スロットを用いる理由の一つは、早い時期から太いサイズのステンレスのレクトアンギュラーワイヤーを使用し、このバインディングを極力軽減し、歯の近遠心的移動に伴うワイヤーのたわみによる間接的なフリクションをできるだけ少なくすることにある。バインディングが小さければ、強制力が減弱した際のワイヤーの復元力による後戻りが少なくなるためオーバーコレクションやタイバック、シンチバック、エイトタイなどの操作も必要なく、治療システムが非常に単純かつ効率的になる。逆にバインディングが大きくなれば垂直的なコントロールを失いやすく、治療中の上下顎の歯の位置や咬合関係の評価もむずかしくなるといえる。

・歯列の3次元的な形態の保持

 頬舌的、あるいは垂直的に位置異常を呈している歯を歯列内へ誘導する時、あるいは抜歯空隙を閉鎖する時には、力の作用・反作用の法則により歯列弓形態に3次元的な悪影響を及ぼす危険性がある。特に、クロージングループを用いて前歯部の後退を行う場合には、前歯部での垂直被蓋の増大やループの活性化に伴う固定臼歯の捻転や挺出などを引き起こしやすい。一方、022 X 028スロットを用いたストレートワイヤー法では、比較的太いサイズ(例えば019 X 025)のレクトアンギュラーワイヤーをエラスティックチェーンなどのエラスティックによってスライディングさせるためにバインディングを最小限に抑え、弱く持続的な力の応用が可能なため歯列の

3次元的な形態の維持が容易となる。また、レクトアンギュラーワイヤーと細い超弾性ワイヤーのdouble wire systemを利用することにより歯列弓の形態を変えることなく歯を歯列内へ誘導することも可能にした。

 

・トークコントロールの確実性

 スライディングメカニクスを応用する際、022 X 028スロットにフルサイズ(0215 X 028)のワイヤーを挿入するとワイヤーとブラケットの摩擦抵抗が大きくなりワイヤーがスライディングしにくくなると考えられる。そのため一般的には若干あそびのある019 X 025あるいは021 X 025や018 X 025のレクトアンギュラーワイヤーが使用される。一方、このあそびがトーク効果を減衰させるとの意見もある。しかしながら、早い時期から太いサイズのプレイン(ストレート)の角ワイヤーを用いることにより、バインディングを小さくすることができ、これによって前歯部後退に伴う前歯の過度の舌側傾斜や垂直被蓋の増大などを避けることができ、かつトークのために十分な時間をかけることができる。また、ブラケットのトーク量やメインアーチのサイズなどに配慮を払えば、一層効果的な歯軸のコントロールが可能となる。

(2)rotationの自動的な是正

 エラスティックチェーンによるスライディングメカニクスでは、最遠心部の歯以外はエラスティックチェーンによって近遠心方向からの矯正力を受ける。つまり、抜歯空間閉鎖中に歯は近遠心方向から引っ張られるためにブラケットベースは自動的にメインアーチの接線に対して平行な関係となり、正しいブラケット選択とポジショニングがなされていれば、rotationは自動的に改善される。リガチャーワイヤーで強く結紮をする方法やローテイショナルウェッジなどの付加物を使用する必要もなく、結紮に伴う痛みなどの不快事項も極力避けることができる。

 なお、非抜歯症例においては、その不正咬合の特徴が個々の歯の位置異常、すなわち捻転や頬舌的、垂直的位置不正が主体であると考えられるため近遠心方向への歯の移動量が限られるのでツインブラケットを用いた歯体移動を試みる必要はない。むしろ個々の歯の位置異常を効率的に是正するためにシングルブラケットを使用し、かつブラケット間のスペースを長くして効果的な歯の移動を行う方が合理的である。

2)スライディングメカニクスを用いる際の注意

 (1)フリクションへの配慮

  クロージングループシステムでは、前述したようにフリクションは抜歯空間閉鎖時には生じない。一方、スライディングメカニクスでは、ワイヤーとブラケットとの間にフリクションが生じる。そこで、ここではこのフリクションについて材料の性状やスロットとワイヤーのサイズとの関係などから発生する直接的なものとバインディンから生じる間接的なものとに分けて触れることとする。

 (2)真の(直接的)フリクションとは

  a.材料の表面荒さ

   まず、ワイヤーやブラケットあるいはチューブ組成(性状)による表面荒さに起因する摩擦を挙げることができる。ワイヤーの表面荒さは、ステンレスワイヤー(熱処理をしていないワイヤー)は比較的スムーズであるが、アーストラリアンワイヤー(熱処理をしているワイヤー)や超弾性ワイヤー(Ni-Ti系)はステンレスワイヤーに比べ荒いことがわかる。

 ブラケットの表面については、セラミックブラケットの方がメタルブラケットよりも粗造であると言われている。そのためメタルブラケットを推奨する矯正歯科医もいるが、スライディングメカニクスでは前歯部を一つのユニットとして後方へ移動させるのでセラミックブラケットでもメタルブラケットでもスライディング操作上はあまり問題にはならない。一方、小臼歯群では、審美性にあまり配慮を払う必要がないことからセラミックブラケットを使用する理由はなく、操作性の高いメタルブラケットを用いる方が得策であろう。なお、セラミックブラケットには単結晶と多結晶のものがあり、多結晶のものの方が表面が粗造であると言われている。また、ブラケットの性状よりもワイヤーの材質による影響の方が大きいともいわれている。したがって、スライディング時には、側方歯にはメタルブラケットを使用し、ワイヤーにはステンレス製のものが望ましいと考えられるが、材料(ワイヤー、ブラケットあるいはチューブ)の性状による真の(直接的)フリクションの違いは決して大きいものではない。

 

 b.ワイヤーとブラケットスロットとの関係

  スライディングメカニクスを用いる際、ブラケットスロットとワイヤーとの“あそび”によって歯の移動様相が異なってくるためワイヤーサイズの選択は重要な問題となる。ブラケットのスロットサイズに対してあそびの大きいワイヤーを用いれば、弱い矯正力を歯に作用することができるが、歯の傾斜傾向は強くなる。さらに、歯の傾斜が大きくなると、歯根のアップライトやトークを行う時に比較的強い矯正力が要求され、結果として歯軸の改善に時間がかかることになる。また、細いワイヤーではバインディングを引き起こしやすく一層歯のコントロールがむずかしくなる。

 一方、ワイヤーが太くなればバインディングを軽減することはできるが、フルサイズになればなるほど、摩擦抵抗は早期から発現してくる。太いワイヤーを用いた場合、歯のティッピングの量が少なく、バインディングも弱く、アップライティング(あるいはトーキング)される量も少ない、すなわちティッピング、バインディング、アップライティングの一連のサイクルが短くなる。そのため歯の移動が止まっているように見える。歯の傾斜やワイヤーのバインディングが少ないと移動量も小さく見えるが、真の歯の移動はワイヤーの復元力によってバインディングから解放されるときに行われている。逆に、ティッピング、バインディングが強くなると歯の時限的な位置の把握を困難にし、上下顎咬合関係の破壊にもつながりかねない、さらにアップライティング時の力のコントロールも難しくなる。したがって、スライディングメカニクスにおいて確実な歯の移動を行うには、のスロットに019 x 025あるいは021 x 025のステンレスワイヤーの使用が最も適していると考えられる。

矯正治療中 セラミックブラケット

 c.結紮の仕方

  ブラケットスロットにメインワイヤーを固定するには、リガチャーワイヤー、エラスティックモジュール、パワーチェーン等で結紮する必要がある。この結紮の仕方がワイヤーのスライディングの良否を左右する場合がある。リガチャーワイヤーの使用では、摩擦抵抗が大きく、それが歯の移動の障害となる場合があることは臨床上よく経験することである。特に、スタンダードエッジワイズでは、犬歯後方移動時などに犬歯の捻転を防ぐために強固に結紮する必要があり、抵抗はより大きくなる。

  スライディングメカニクスでは、エラスティックーチェーンによって各歯は近遠心方向、かつ唇頬側方向への力も受けながらスロット内をワイヤーが遠心にスライドするため歯が捻転したりするような不快事項は起こらない。さらに捻転している歯はパワーチェーンによって自動的に改善されるため効率の良い歯の移動が可能となる。したがって、強固なリガチャーワイヤーによる結紮から生じる患者の不快感を軽減し、さらに術者の手指の刺し傷などの受傷も減らすことができる。

      最近では、この結紮の仕方に一層の工夫を凝らし、かつワイヤーとブラケットの接触面に配慮を加え、直接的なフリクションをも小さくしようとの考えのもとでブラケットと特殊な形態をしているワイヤーからなるセルフライゲイションシステムと命名された治療システムも生まれている。

 

(3)間接的フリクション:

 矯正力によって生じるバインディングは間接的なフリクションとなり歯の移動を妨げる要因になる。この間接的なフリクションは、バインディングを小さくすることにより回避することができる。そして、バインディングを軽減させるためのひとつの方法に太いワイヤーの装置を挙げることができる。間接的なフリクションが原因で歯の移動が妨げられている時には、新たに矯正力を付加する必要はない。歯には矯正力が作用しており、その力はバインディンとして働いているのであるから矯正力を強めるとバインディンを一層大きくし、垂直的な関係を見失うなどの不快事項を惹起しやすくなる。

    ワイヤーが細ければ細いほどこの傾向は強い。大切なことは与えた矯正力によってひずんだワイヤーの復元力による歯の移動が終わらないうちに新たに過度な矯正力を作用させないことである。

 

3)固定について

 スライディングメカニクスは顎外固定、顎内固定、顎間固定のいずれかの方法によっても行うことができるが、ここでのスライディングメカニクスは、顎内固定を応用して6前歯を同時に移動させる方法、すなわちエンマスムーブメントである。力学的には単純であるが、そのために固定に対する危惧の念を抱く矯正歯科医が多い。そこで、スライディングメカニクスと固定の関係について考えてみる。

 (1)固定源かかる力について

  一般にスタンダードエッジワイズ方で抜歯空隙を二度のステップに分けて閉鎖している。最初に犬歯を後方臼歯や前歯を固定源として遠心移動し、その後に遠心移動した犬歯を固定源に加えてクロージングループにて4前歯をひとつのユニットとして後方移動させている。この場合、犬歯遠心移動時は力を分散させ、各固定歯にかかる力を小さくできるが、4前歯移動時のループから発揮される力はかなり強いもので、しかも固定歯は二度にわたって力を受けることになる。さらに、遠心移動された犬歯は近心に戻ろうとするため4前歯を後退させるための加強効果としての役目を果たすとは考えにくい。また、弱い力による傾斜移動を主体にして歯冠部を傾斜する場合では、固定歯の負担は非常に小さくできるとしている。しかし、歯根のアップライトや歯冠のトークのためには強い力が必要となる。つまり、歯の移動様式を一度あるいは二度に分けても、また傾斜移動や歯体移動にもかかわらず、いかなる方法を講じても歯を移動させるのに必要な最終的な力は同じで、顎内固定を応用する限り、力の作用、反作用の法則から移動に必要な力と被移動歯(固定歯)で消費される力は同じであると考えられる。

 歯の移動は骨代謝と同様に、未分化間葉細胞由来の骨芽細胞や血液栞細胞由来の破骨細胞が相互に関係し合うカップリング現象によって営まれ、骨吸収と骨系生徒が平衡関係を保ちながら行われている。すなわち、弱い力であっても歯根、歯槽骨周囲においてはさまざまなバイオロジカルな変化が惹起され、さらにその反応は患者の年齢、性別、全身健康状態、口腔衛生管理、歯根膜の量、幼弱性や健全性、力の作用時間、治療期間等の影響を受け、かつ複雑な生物学的メカニズムによって行われているのである。たとえ力が弱くても、その力が長期に及ぶものであれば固定歯への影響は無視できない。歯の移動は静止している物体を動かすような単純なものではない。

 したがって、前歯部の後退にあたっても弱い力を作用させることが重要ではあるが、その期間も長期とならないようにすることも大切となる。

(2)エンマスムーブメントについて

 前述のように加強固定や顎間、顎外固定の場合を除いて、同一顎内で抜歯空隙を閉鎖する場合はいかなる方法(犬歯移動後に4前歯を移動する方法、はじめから6前歯を同時に移動する方法、歯冠を傾斜移動をさせてから根を整調直する方法)においても移動歯にかかる力は同時に固定歯にかかる力となる。また、作用力は弱くても、矯正力による骨のバイオロジカルな反応は起きている。したがって、歯の移動に際し、移動歯、固定歯に同じ量の矯正力が負荷されるのであれば、二度のステップに分けて移動を行うよりも一度で行う方が合理的である。さらに、二度に分けて移動する際の弊害を考えると犬歯を先に遠心移動する臨床的意義を見出すことはできない。そして一度に6前歯を後方に移動するシステムがエンマスムーブメントと呼ばれるものである。このエンマスムーブメントは、クロージングループを用いても行うことはできるが、犬歯の遠心移動後に4前歯を移動する場合よりもループ使用時に生じる弊害(クロージングループに伴う弊害を参照)が大きいと考えられる。

 

(3)加強固定について

 顎外、顎間、顎内、インプラントのいずれの固定法をもちいてもスライディングメカニクスを行うことができる。マキシマムアンカレッジを必要とする症例では、インプラントやJフック等の顎外固定によってワイヤーをスライディングさせることも可能である。しかし、Jフック応用の場合は患者の絶対的協力が不可欠であることや矯正力のコントロールはむずかしい。臨床上特別な症例以外はあまり効率の良い方法とは言えない。Miniscrewなどを応用したTDA(Temporary anchorage device)の併用が望ましい。また、顎間固定を用いる場合には垂直分力による移動歯や固定歯への悪影響も考えられる。一般的には、同一顎内に固定を求めていることが多く、顎内固定にて歯を移動させる場合は、前述の通り固定歯と移動歯には同等の力が負荷されるので固定歯への負荷の軽減を図るためには、リンガルアーチやヘッドギアなどの加強固定を考えるべきである。

 このように6前歯をエンマスで移動させるには、022 x 028スロットのプリアジャステッドブラケットシステム~ストレートワイヤーテクニックでスライディングメカニクスを用いるのか効率的である。しかし、顎内固定を応用する限り、6前歯を後退させるために負荷されている力はそのまま固定源にもかかるのであるから、このシステムが固定面において他の方法よりも優れているというのではない。必要以上の力を固定源にかけずに、できるだけ単純化して合理的に治療を終わらせる意味からこの方法が優れていると言えるのである。

 

監修 日本橋人形町ジェム矯正歯科

日本橋で出っ歯や口元をさげたいなら日本橋人形町ジェム矯正歯科

 

   
関連新着記事
ブログカテゴリー
     
矯正治療
子供の矯正
中学生以上の矯正
クリニックについて
その他お知らせなど
TOPへTOPへ