2023/11/10 カテゴリー:NEWS | コラム/NEWS | お知らせ
矯正治療と下顎骨の外力応答性
第1期の矯正治療(子供の矯正あるいは小児矯正)で、使われている
ヘッドギア、フェイシャルマスク、拡大装置、機能的顎矯正装置やチンキャップは
どうような効果が期待できる?
矯正治療と、上顎骨複合体や下顎骨の外力応答性について
*1940年代まで:すべて遺伝的に決定されている
*1950年代:骨膜や縫合などの膜性骨は機能環境によって影響される
*1960年代、1970年代以降:Moss の Functional Matrix Hypothesis や Petrovic や
Rabie らの研究がServosystem theoryへと受け継がれ、
今日では、骨の外形や大きさの基本は遺伝的に決定され
るが、その後、膜性骨は機能マトリックス(周囲の機能
環境)の影響を強く受け、一生を通じて形態変化するこ
と、また下頭軟骨は、軟骨内骨化するが、環境的、機能
的な刺激に対して著しく応答する組織であるとする見解
が受け入れられるようになった。Growth modification(
成長能を利用して骨格的な問題の改善を図ること)が臨
床で受け入れられる理論的根拠がここにある。
ヘッドギア、フェイシャルマスク、拡大装置:膜性骨へ矯正力を作用させ、縫合部での骨
の改造現象を促す装置
機能的顎矯正装置やチンキャップ:下頭周囲を覆っている線維性の縫合組織膜での付加成
長に影響を与え、かつ下顎頭軟骨部の組織構造に変化
を与え、下顎頭の成長発育を抑制、促進させることの
期待できる装置
骨組織の外力応答性は、
・骨が膜内骨化なのか軟骨内骨化なのか
・鰓弓由来か、あるいは副軟骨由来か
・未分化間葉細胞などの細胞数や分化能、各細胞の代謝活性などの違い、
などによっても影響される。
したがって、矯正力に対する組織の応答性は、分化能や細胞活性の高
い未分化間葉細胞を多数含む幼弱な組織を有する幼児と未分化間葉細
胞も減少し、代謝活性の低い細胞から成る組織の高齢者とでは大きく
異なるといえる。
外力応答性が高いということは、矯正力の減衰、消退によって後戻り
とも考えられる逆の応答を示すともいえる。治療期間、形態改変の程
度、改変後の骨周囲組織の順応性や適応性、などを考慮し、慎重な治
療戦略の立案が望まれる。さらに、形態変化を望む部位に矯正力が一
定期間、確実に、適正に適用されるのか、あるいは患者のコンプライ
アンス(治療に対する協力)が確実に得られるのか、なども治療効果
に与える大きな要因となる。
監修 日本橋人形町ジェム矯正歯科